決断の時

さらに後日、ついにこの日がやってきました。十八が戦人の記憶があふれ出てきたと言うのです。そして、事件当日何があったのか、そのほとんどを思い出しました。先日、右代宮縁寿が面会したいと申し出たのを聞いて、戦人の記憶を強く刺激した結果でしょう。

 

幾子はチャレンジの最大のチャンスだと思いました。戦人の記憶は完全になりつつあります。ここで自分の気持ちを思い出してもらえれば、事件当時の真実を理解してもらえるかもしれません。幾子は言いました。「分かりました。その記憶を話して下さい。もう一度だけ偽書を作成します。それを見て、戦人としての記憶に決着をつけるといいでしょう」

 

そしてEP4の執筆が開始されました。深夜、電話で呼び出されたりとか、表へ出た時にはみんな死んでいたりといった記憶をプロットに、偽書が出来上がりました。そして戦人が観測していない部分を、幾子が魔法説を語るのです。

 

幾子は朗読を始めました。いつも通り激論を交わしながら。そして最後に事件当時と同じく、紗音は戦人に言いました。「6年前の罪を思い出せ」

幾子も十八に言いました。「思い出せ。……だからこそ罪なのだ」

 

 

…しかし。

 

 

やはり戦人は思い出しませんでした。これではこのまま続けても、戦人が当日の真実を理解することはないでしょう。

幾子は言いました。「戦人。やめだ」

 

戦人は納得できません。「どうしてだ?」

「そなたは右代宮戦人ではない。そなたは明日夢の息子ではないのだから。だからこれ以上続けても意味のないことだ」

「なんだって。そんなばかな」

この日を境に、幾子は論争をやめました。十八はその後、戦人との記憶の板挟みに耐えきれず、自殺未遂を犯してしまいます。

 

それを受けて幾子は、こう言います。「ごめんなさい。もういいのですよ、十八。あなたは八城十八。右代宮戦人ではありません。もうやめにしましょう。右代宮縁寿さんの面会はお断りしましょうか?」

 

幾子の狙いは、戦人をエリカ化することでした。幾子は、このEPで伝えたい真実をすべて提示しましたが、戦人は真相に気づけませんでした。このままこのEPをやりとげてしまったならば、戦人として縁寿のところに帰ってしまう。ならばいっそ戦人につらい現実の一端を突き付け、戦人をエリカ化させることで十八に戦人を拒否させ、十八として幾子と一緒に生きていけるだろうと。

その目論見は成功します。十八は戦人の記憶を拒絶し、以降十八として生きていくことを決意するのでした。

 

要するに、魔法の理解だけではだめなのです。

縁寿もそうでしたが、戦人はEP3のラストで魔法に一定の理解をしました。縁寿はこのEPの旅の中で、魔法を理解しました。しかしそれだけでは、彼らにハッピーエンドは訪れないのです。+真実が伴わなければならないわけですね。

その両方を彼らに与えるためには、あと何をしなければならないのでしょうか。そのために紗音はメッセージボトルを海に投じるという手法を用いたのですが、果たしてこの後、彼らはそれに気づけるのでしょうか。 

 

ちなみに、この時点で戦人は記憶をほぼ取り戻していますが、幾子=紗音だと気づきません。なぜか。その答えは「愛がなければ視えない」です。紗音どころか、あの日の六軒島にいた人物すべての顔を思い出せなかったのでしょう。険悪な親族会議などなどから、あの日の人たちに愛を感じられなかったからです(紗音に対しては裏切り者という想いでしょうね)。

EP8の縁寿の「右代宮金蔵があんな人のわけないじゃない!」と同じ主張ですね。これは後記するEP8の????で、全員に出迎えられるというシーンの対となる推測です。

 

 

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